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百田尚樹と言う作家は嫌いでも作品は嫌いになれないー映画「海賊と呼ばれた男」感想

久しぶりに映画を観てハラハラしました。
船の勢いが圧巻ですね。小綺麗なパイレーツオブカリビアンみたいなものかと思っていましたが少し違いました。

 

冒頭で60歳の國岡こと岡田准一さんが出てくるのですが、声も見た目も60歳にしかみえない。

これ、本当にすごいです。同年代の役者さんもたくさん出てきているのですが、その人たちと比べても貫禄が違うので圧倒的に歳上にみえるんですよね。
本当にすごいです。

人の年齢の判別の仕方は、喋るトーンと速さだと思っています。

そう言う点で、色々研究されたのでしょうかさすがです。

 

美術に関しても、どこまでがCGでどこまでが美術かまるで分からないところも本当にすごいと思うのです。
おそらく看板やら飛行機やらはCGっぽいですが街並みやら船は正直わかりません。


always三丁目の夕日や永遠のゼロとスタッフは同じなのでそこの加減もとてもよくにています。衣装も。
ここまで物語に引き込むのはもちろん役者さんの芝居ありきですが、美術の力もあると思います。
ただ、國岡商店は完全にセットでしょうね。あと、ラストの船と。いくつのセットを作ったのか想像もつきませんが。

 

映画美術の難しいところはこう言う時代物の中で歴然としてくると思っています。

 

実際の歴史のリアルと、イメージのもやの中でのすり合わせはとても難しい作業のように感じてしまうのです。

その当時にあったものは決して古く汚れている物ではなくても、当時のイメージだと汚れているものを置いたほうがしっくりきてしまうと言う映画的矛盾。

そこは映画スタッフの親方たちの力が大きいところなのでしょうね。


そしてストーリーとしては、今の出光の話がもとになっているようですね。

ウィキペディアをみるとほとんど映画のままなので結構しっかり映画なのではないかと。

最近もニュースなんかでは出光の提携するしないのような話を聞くので、地続きで歴史が繋がっているのを実感します。
ただ、原作は未読なのではっきりとは分かりませんがだいぶ省略されているのではないかとも感じますね。

 

私は百田尚樹さんがあまり好きではないですが、悔しいことに百田さんが書く小説は面白いなと思ってしまいます。

永遠の0も何度も読みました。映画も観ましたがやはり本の方が好きでした。

悔しいですね。

 

読者受けするポイントをよく理解して書かれている上に、まんまとその術中にはまっている感じが悔しいですね。
他にも深川監督や有川浩さんなんかの作品もあまり好きではないのに心動かされてしまい悔しい思いをするんですよ。


見ごたえとしては抜群の映画です。
ただストーリーとしてはあまりハマりませんでした。

 

まぁ、史実をもとにしたドキュメンタリーのようなものなのど波のない感じはどうしても仕方がないのでしょうが。
この手の、いい親方だろう!すごい人間だろう!と見せつけられるような作品は世の中にいくつもあるのでその点では、どこにでもある印象を受けるのです。

 

ただCGの技術と幅広い年齢を演じた岡田くんの演技力観たさであれば十分満足できる映画だと思います。
國岡はたしかに理想の上司像であるのは分かりますしね。